2008年9月24日水曜日

【AR】Sekai Cameraは初の拡張現実アプリになり得るか?

拡張現実はARToolkit人気と一部研究者の動画により広く知れ渡ることとなった。ただ、それらは現実の世界に3D CGを重ねるというだけのエンターテイメント、パフォーマンスの域を脱し得なかった。しかし、最近話題のSekai Cameraは専門家よりも一般の人に受けているようだ。

このプロジェクトはYouTubeでプレゼンが12万回以上も視聴され大きな話題となっている。しかし一方では技術的な観点で実現可能性に疑問の声が出ている。プレス発表などに反応したリーダーのコメントは大方大絶賛している一方、ITジャーナリストのブログや技術系の個人ブログなどで懐疑的な意見が少なくない。

私の印象として

肯定派:これはすごい!だから文句つけるやつはどうかしている!
否定派:実現されたらすごいけど、iPhoneのハードでどうやって実現すんの?

というのが大方の意見と思う。ということは肯定派も否定派もSekai Cameraを歓迎しない人はいない。みんな大歓迎だ。

では、何が違うのか。答えは簡単、技術的に実現可能か考えたかどうかだ。Sekai Cameraが実現困難であることは少し考えたらすぐわかる。TC50のデモムービを実現することはiPhoneの標準ハードでは無理(あるいは困難)ということは否定派の共通する意見だ。

以下では、Sekai Cameraが大きな反響を呼んだ原因と実現可能性についての順で論じたい。

「インパクトについて」
Sekai Cameraが目指すサービスが実現されれば、モバイルコンピューティングが大きく進化することになり、インパクトはかなり大きい。ただ、Sekai Cameraのアイデア自体はそれほど新規性のあるものではないと言える。同様なサービスは多くの人たちが夢見てきたしSFや映画で繰り返し描かれてきた。このようなコンセプトデザイン(Future of Internet Search)を発表する人までいる。
では、なざSekai Cameraがこうも話題をさらったのか?答えは簡単、デモムービーがわかりやすかった。ややこしいことにはいっさい触れず、できることだけを提示したデモだった。一部ではTonchiDotのCEOを褒める声もあるが、プレゼンと質疑応答を視聴する限り褒める点はない。というより、プレゼン自体内容があるようには思えないしパネリストへの最低限の礼儀は感じられない。オライリーをはじめパネリストの質問内容を批判する声も少なくないが説明されるべきポイントが説明されなかったので彼らの質問は至って妥当。ま、この点はさておき、デモムービで紹介されていたサービスが実現できるのか次の論点を進めたい。

「Sekai Cameraを実現するためのハードウェア」
iPhoneにはGPSとWiFiが搭載されている。よって、測定精度が両者で異なるが緯度経度を取得することは可能だ。また、加速度センサーが内蔵されている。加速度センサーはiPhoneの傾きを検出してくれる。まとめると
GPS/WiFi:場所情報
加速度センサー:本体の傾き
ということになる。ではこれで十分だろうか。答えはノー。全然足りない。

足りないものは
コンパス:iPhoneがどちらの方角に向けられているのか
距離:対象とどのくらい近いのか
高度:ユーザがiPhoneをかざす高さ
である。

これらがないと3次元空間でiPhoneが向けられている対象を特定することはできない。Enkin (http://enkin.net)ではAndroidを環境に選んで外部のセンサーにより3次元空間を特定している。

「他の可能性」
iPhone標準のハードが限られているといって実現が無理とはいえない。外付けという選択肢が残っている。また、画像処理で対象を識別するということは原理的に可能だ。しかし、画像処理となるとテンプレートマッチングか特徴抽出ということになるだろうがiPhoneの演算処理能力でできることは限定的だ。マッチングするデータが極めて限られていれば何とかなるが、データ量が少し増えるとシステムはすぐに破綻を来す。Sekai Cameraのプロジェクトには赤松 正行氏も加わっているようなので「パテント」で隠されている技術があるのだろうか?質疑応答で、どのくらい画像(Visual-based)に頼っていて、どのくらい場所(Location-based)に頼っているのか、と訊かれ、ほとんどすべて場所(Almost all location-based)と答えているので画像処理による認識はしていないと考えてよい。

では実際の落としどころを考えてみよう。

1. デモはすべて実現できる:凡人には思いもつかない天才的な技術革新がある(イマジネーションでなんとかなる!?)
2. デモは外付けハードで実現できる:Enkinのようにセンサーを外付けする。
3. デモの一部を実現できる:GPS/WiFiから場所を特定しサーバーが周辺情報をプッシュする。画像も一緒に送って、ユーザがその画像を実風景から探し出してiPhoneをそちらに向ける。
4. デモは構想段階:センセーションなデモで多くの人にプロジェクトを知ってもらう。デモはマーケティングの一環。
5. なんだかんだで実現できる:GPS/WiFiから場所を特定してサーバーから情報をiPhoneにばんばん送る。後はユーザが適当にiPhoneをそれらしい方角に向けてくれればそれなりに動くだろう。最初のリリースはこの辺で乗り切る。理論に基づいた完璧なシステムは目指さず、それなりのものをリリースする。

日本では11月にサービスを始めるらしい。CEOがインタビューで言っているので確かな情報だ。日本のみならず海外でも大きく取り上げられているプロジェクトだけにがんばっていただきたい。1の場合は革新的なサービスになり、日本から世界に通用するネットサービスに成長する可能性は大。2は妥当だけど普及へのハードルはかなり高くなってしまう。3は骨抜き。第一つまらない。4は論外。5は3とあまり違いないようだが、個人的には5が一番可能性が高いと思う。いろいろ勝手なことを書き綴ってみたが、11月が楽しみだ。

ちなみに私はFaLLenというソフトウェアを個人的に開発している。おもちゃレベルだけど、できることを紹介すると
1. 場所情報から飲食店を収集:PlaceEngine + (Tabelog or Hotpepper)
2. USBカメラから風景をリアルタイムで識別してタグ付け:SREngine
(Windows, Core2Duo)
iPhoneのハードウェアリソースではとてもじゃないけど動かない。サーバサイドで動くエンジン作ってみよっと。

参考

「セカイカメラ」で電脳コイルの世界が実現?(2)

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